所在不明の共有者の持分を取得する!?

1 共有者がいない、分からない!


 例えば、何十年も前からA、B、Cの3人で3分の1ずつの持分を共有し、3人のうちBさんが長年、居住のために使用している土地があるとします。

 その後、Bさんが亡くなり、同居のXさんがその持分を相続などで取得した場合、Xさんとしては、将来のことを考え、この土地を単独で取得したい、具体的にはA・Bのそれぞれの持分を買い取りたいと思うかもしれません。

 このような場合、Aさん、Bさんが存命で、連絡先(所在)が分かっていれば、それぞれに持分の購入を申し出、応じてもらえなければ共有物分割請求をすることが考えられます(民法258条)。

 ところが、もし、2名のうちAさんとは交流がなく、連絡先が分からない、それどころか戸籍等の調査をしても所在等が不明という場合、どうしたら良いでしょうか…?

2 所在等不明な共有者(不明共有者)の持分を取得する裁判手続きの新設


(1)このような場合、以前(民法改正前)は、①Aさんについて、裁判所に対し、「不在者財産管理人」の選任を申立て、②選任された不在者財産管理人との間で、持分の売買について協議、あるいは同人を相手方として共有物分割請求を行う、という二段階の手続きが必要でした。当然、手続きの分だけ費用もかかります。

(2)そこで、このような不明共有者との共有状態をすっきりと解決するために、不明共有者の有する持分を取得する裁判手続きが新設され(改正民法262条の2)、今年の4月から運用が開始(施行)されています。

 この手続きを利用することで、上記のⅩさんは、Aさんについて不在者財産管理人選任の申立てをせず、直接、Aさんの持分を取得することができます。

 もっとも、「無償(ただ)」ではなく、取得する持分の時価に相当する金銭を供託する必要があります。

3 弁護士にご相談を!


 不明共有者の持分取得のための裁判手続きにあたっては、不明共有者の調査や不動産の時価額の査定など必要な調査・書類が複数あります。

 Xさんと同じような悩み・問題を抱えている方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

(弁護士 小山 明輝)