小山 明輝

令和2年改正個人情報保護法の施行

1 4月1日より施行!


 いわゆる令和2年改正個人情報保護法が,本年4月1日より施行されました。

 あえて,「令和2年」と書いているのは,実は令和3年にも同法の改正がなされている(こちらも同日施行)ためです。

 もっとも,後者はいわゆる「デジタル関連法案」の一つとして改正されたものであり,行政機関や独立行政法人等における個人情報の取扱いに関することが中心です。一般企業・事業者の方々に影響があるのは主に令和2年改正の方です(もちろん事業形態等によっては,令和3年改正の確認・対応も必要です)ので,ご留意ください。  

2 何が変わるの?


 ここでは,いくつかのポイントを紹介するにとどめます。詳細につきましては,個人情報保護委員会のホームページ等でご確認ください。

(1)短期保存データの開示等の対象化

 これまでは対象外だった,6か月以内に消去するデータ(短期保存データ)についても「保有個人データ」に含められました。その結果,短期保存データも開示,利用停止等の対象となります。もっとも,開示等請求に応じるためだけに係るデータを保存する必要はありません(不要となれば遅滞なく消去する)。

(2)請求権の拡充

 本人が利用停止・消去等の請求ができる場合について,「目的外利用,不正取得の場合」に限定されていましたが,本改正により,これらに加え,①利用する必要がなくなった場合②重大な漏えい等が発生した場合③本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合,にも拡充されました。

(3)漏えいなどが発生した場合の報告等の義務化

 個人データの漏えい等が発生し,個人の権利利益を害するおそれが大きい場合,個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務化されました(これまでは委員会告示による努力義務)。もっとも,「全件」ではなく,義務化の対象となる要件については委員会規則で定められています。

(4)その他

 個人関連情報(生存する個人に関する情報であって,個人情報,仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないもの)の第三者提供規制や,公表事項等の充実(「安全管理のために講じた措置」の追加)なども規定されています。

3 困ったときは専門家にご相談を!


 個人情報の取扱いについては,昨今,プライバシー保護の観点から国内外を問わず法規制が強化される傾向にあります。もっとも,個人情報保護法は用語の理解自体が難しく(私も適宜,文献を参照しています…),事業者の方が対応に苦慮することも少なくありません。

 困ったとき,悩んだときは,ぜひ,弁護士等専門家にご相談ください。

(弁護士 小山 明輝)

4月1日から18歳も成人に!(改正民法の施行)

1 成年年齢が引き下げられます!


 成年年齢に関する改正民法(同法第4条)が,本年4月1日より施行されます。

 これに伴い,同日で18歳以上20歳未満の方は,その日に成年に達することになり(つまり2022年3月31日までは「未成年」なのに,翌日に突然,「成年」になるのです!)2004年4月2日生まれ以降の方は,18歳の誕生日に成年に達することになります。

2 何が変わるの?


(1)前提として,民法上,「未成年」の方は,親権者(両親など)の同意がなければ原則として「法律行為」をすることができず,同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができます。

 例えば,未成年者が二輪車の免許を取得したからと言って,親権者に無断で数十万円のバイクを,ローンを組んで購入したとします。

 しかし,後日,それを知った親権者がバイクの購入に反対の場合,当人や親権者は,このようなバイクの購入行為とローン契約を取り消すことができる,という制度です。

(2)「成年になる」ということは,つまり,このような親権に服することがなくなる,というものです。

 その結果,18歳以上の方は,親権者の同意を得ずに,日常生活における様々な契約をすることができるようになります。

 逆に言えば,未成年の「取消権」がなくなってしまうので,いわゆる「消費者被害」などに遭わないよう,十分,注意が必要です。

(3)それ以外にも,法律上,自分の住居や進路を自分の意思で決めることが可能となります(実際は,ご家族としっかりお話し合いをした方が良いと思いますが…)。

3 お酒・タバコ・公営競技(ギャンブル)などはダメですよ!

 もっとも,飲酒や喫煙,競輪・競馬などのギャンブルについては,法律上「20歳以上」という定めは改正されていません。

 「成人したから堂々とお酒が飲めるんだ!」などと勘違いしてしまわないように気をつけましょう…。

(弁護士 小山 明輝)

実印と電子署名の法的意味

1.はじめに:実印の重要性


(1)実印とは?

 「実印」とは,要するに「印鑑登録」(登録機関への「印影」の登録)をした印章のことです。個人では各自治体の条例に基づき印鑑登録をすることができますし,株式会社等では法律上,設立登記時に代表者の印鑑の提出が必要となります。

(2)実印はなぜ重要か?

① たとえば,貸金の返還をめぐって裁判になったとき,貸主は,金銭貸借の事実を立証(証拠に基づいて証明)しなければなりません。金銭貸借であれば,金銭消費貸借契約書,あるいは借用書などです。弁護士が「契約の時は契約書を作りましょう。」と強く勧めるのは,これが理由です。

② しかし,借用書があったとして,借主自身が真実,借用書を作成したのか,現場に居合わせていない裁判官には分かりません。

③ そこで,法律(民事訴訟法第228条4項)は,借用書などの「私文書」に作成者本人の署名又は押印があるときは,その本人が作成したもの(書面の真正)と「推定する」と定めました。

④ また,最高裁判例には,印影が本人の印章によるものであるときは,事実上,その本人が押印したものと「推定する」と判示したものがあります。この二つの「推定」を「二段の推定」と言います。

⑤ では,押印に使用した印章が本人の所有であることは,どのように証明するのか…?

 お気づきだと思いますが,正にこれが,「印鑑登録」の意味です。

 先ほどの金銭貸借の例で言えば,借用書の印影が印鑑登録証明書と同一の印影であれば,当然,「実印」,つまり借主の印章により押印されたものということになるので,借主が借用書の真正を争うことは非常に難しくなります。

だからこそ,実印(代表者印)を安易に使用したり,一時的でも第三者に渡したりすることのないよう,大切に保管して頂きたいのです。

2.電子署名の法的意味


 法律(いわゆる電子署名法。第3条)は,電磁的記録(電子文書等)は,本人による一定の電子署名(本人しかできない一定の方式によるものに限る)が行われているときは,真正に成立したものと推定する,と定めています。

 つまり,電子署名は,電子文書等において,紙面における実印と同じ効力を持つ(押印のデジタル化),ということです。

 わざわざ「実印」を用いる必要がないということで,リモートで業務を行うことの必要性・重要性が高まっている昨今では非常に便利そうですが,「本人による」という要件があるため,必ずしも普及しているとは言えない現状があるようです。

 そこで,現在,「本人しかできない一定の方式」による電子署名であれば,「本人による」ものではない署名(リモート署名)にも「書面の真正」の推定を働かせるよう法律を改正する動きがあるようで,今後の立法作業が注目されます。

(弁護士 小山 明輝)

準備はO.K…?同一労働同一賃金への対応

1 中小企業への適用は2021年4月1日から!

 平成31年4月1日より順次施行されている働き方改革関連法ですが,そのうち「同一労働同一賃金」に関する法令の中小企業への適用が,いよいよ来年4月1日から開始されます。

2 「同一労働同一賃金」って,なに…?

(1)

平たく説明すると,「賃金」について,「正社員(無期雇用フルタイム労働者)」と「非正規雇用労働者(パートタイム労働者,有期雇用労働者)」との間で,「不合理な待遇差」や「差別的取扱い」を禁止する規定です。

実は,パートタイム労働者については改正前の法律も「同一労働同一賃金」の原則を認めていたのですが,改正法(いわゆるパートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条)により,新たに有期雇用労働者にも当該規定が適用されることとなりました(派遣労働者については「配慮義務」が発生。)。

  
(2)

まず,「賃金」については,基本給のみならず,賞与や各種手当も含まれます。

昇給についても留意する必要があります。

  
(3)

次に「不合理な待遇差の禁止」(均衡待遇)についてですが,①職務内容(業務の内容+責任の程度),②職務内容・配置の変更範囲,③その他の事情を考慮して,これら事情に違いがあれば「違いに応じた」支給をする必要があります。

例えば「パートタイム」という理由だけで,正社員に支給される各種手当を一切支給しない,ということは許されません。

  
(4)

そして,①職務内容や②職務内容・配置の変更範囲が同一であれば同一の支給が行われるべし,というのが「差別的取扱いの禁止」(均等待遇)です。

(1)

平たく説明すると,「賃金」について,「正社員(無期雇用フルタイム労働者)」と「非正規雇用労働者(パートタイム労働者,有期雇用労働者)」との間で,「不合理な待遇差」や「差別的取扱い」を禁止する規定です。

実は,パートタイム労働者については改正前の法律も「同一労働同一賃金」の原則を認めていたのですが,改正法(いわゆるパートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条)により,新たに有期雇用労働者にも当該規定が適用されることとなりました(派遣労働者については「配慮義務」が発生。)。

(2)

まず,「賃金」については,基本給のみならず,賞与や各種手当も含まれます。

昇給についても留意する必要があります。

(3)

次に「不合理な待遇差の禁止」(均衡待遇)についてですが,①職務内容(業務の内容+責任の程度),②職務内容・配置の変更範囲,③その他の事情を考慮して,これら事情に違いがあれば「違いに応じた」支給をする必要があります。

例えば「パートタイム」という理由だけで,正社員に支給される各種手当を一切支給しない,ということは許されません。

(4)

そして,①職務内容や②職務内容・配置の変更範囲が同一であれば同一の支給が行われるべし,というのが「差別的取扱いの禁止」(均等待遇)です。

3 「同一労働同一賃金」に違反した場合は,どうなる…?

 従業員の方々から,「不合理な待遇差」や「差別的取扱い」の程度・金額に応じた損害賠償請求の訴訟や「行政ADR(行政による裁判外紛争解決手続き,申立先は都道府県労働局。無料・非公開)」の申立を受ける可能性があります。

4 最後に

 「同一労働同一賃金」については,「ガイドライン」(正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」があるほか,厚労省のホームページ等で必要な情報を取得することが出来ます(「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」などという資料もあります。)。

 労使間で「ウィン・ウィン」の関係を築くため,来年4月1日の適用に向けたご準備を進められてはいかがでしょうか。

(弁護士 小山 明輝)

安心!…でも,ややこしい?:自筆証書遺言保管制度

1.自筆証書遺言保管制度が施行されます。

 今年(令和2年)7月10日から,「自筆証書遺言保管制度」が施行されます(予約受付は7月1日から)。

 簡単に言うと,自筆証書遺言,つまり「自分で書いた(ここ注意です)」遺言書を法務局で預かってくれる制度です。

 これにより,せっかく作った遺言を紛失するかも,あるいは誰かに廃棄・改ざんされるかも,などという不安から解消されます。

 また,自筆証書を保管している人(当該遺言を発見した相続人も同様)は,遺言者が亡くなった後,なるべく早めに家庭裁判所に提出して「検認」(要は,家庭裁判所に相続人全員が集まって遺言の存在を確認する手続き)の請求をする必要があります。

 しかし,法務局で遺言を保管してもらっていれば,「検認」の手続きは不要となります。

2.ご注意:「安心」にはなりますが,「簡単」にはなりません…。

 …と,ここまで書くと,自分で遺言を作成してみようかな,と思われる人も出てくるかもしれませんが,少しお待ちください。

 ご注意頂きたいのは,法務局では,遺言を「預かって」くれますが,自分の代わりに「書いて(作成して)」くれる訳ではありません。

 つまり,自筆,つまり遺言を「手書き」しなければならない,という手間は全く変わらないのです(財産目録に限って,必ずしも「手書き」する必要はありませんが,ページ毎の署名・押印が必要です。)。

 しかも,7月10日以降に手書きの遺言を書いて法務局に持っていけば直ぐに預かってもらえる,という訳でもなく,

 ① 「所定の様式」(A4用紙で,所定の余白を確保して,片面のみ記載など)で作成し,

 ② 来所する法務局(住所地など)に「事前予約」(最低,来所日の前々日まで)の上,

 ③ 自筆証書遺言のほか,事前に作成した申請書(法務省ホームページからもダウンロード可能)及び添付書類(本籍地記載の住民票など)等「必要書類」を(事前に)揃えて,

 ④ 遺言者本人が来所(代理人による申請不可)して,

保管の申請をする必要があります。

 その他にも,一定の手数料(保管申請は3900円)が必要,来所持,顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード,運転免許証など)の提示が必要,保管申請後,住所変更等があった場合には届出(郵送可,法定代理人による届け出可)が必要など,いくつかの注意点があります。

 しかも,保管時,法務局では「形式的要件(署名・押印の有無,加除訂正の方式の適否)」のチェックはしてくれますが「内容の有効性」については一切チェックしませんし,自筆証書遺言作成に関する相談にも応じて頂けません。

 つまり,遺言を「自分で手書きしなければならない」という手間は変わらない上,公的機関での保管を行う上での手続面・費用面での負担が増えているのです。

3.まとめ:あくまで私個人の感想ですが…

このように,自筆証書遺言保管制度が始まったとしても,なお,公正証書遺言との間では一長一短があり,一概にどちらが良いとは言い難い面があります。

 ただ,敢えて言えば,自筆証書遺言を作成する場合でも,できれば事前に(又は適宜),弁護士など専門家に相談されることをお勧めしたいところです。

 また,配偶者居住権の制度を利用する,法定相続分によらない遺産の分配を行う,相続財産が多種・多数・多額などの事情がある場合には,「相続をめぐる争いをできるだけ避ける(小さくする)」ため,弁護士など専門家のサポートを利用された上で,公正証書遺言を選択された方が良いのかな,と思います。

 ともあれ,これを機会にぜひ一度,相続・遺言についてお考え頂けると幸いです。

(弁護士 小山 明輝)

養育費,なにが変わった?~「新算定表」の影響~

1.はじめに:「新算定表」の発表

 家庭裁判所で「養育費」(婚姻費用も含む)の額を決める場合,いわゆる「算定表(標準算定方式・算定表)」が利用されていることは,ご承知の方も多いと思います。

 この算定表は,裁判官などで構成される「東京・大阪養育費等研究会」なる研究会が平成15年に発表し,定着したものでした(旧算定表)。

 しかし,時が経つにつれ,算定の元となった統計資料が実情に合わないのではないか,などの意見が高まった結果,2019年(令和元年)12月23日,いわゆる「新算定表【改定標準方式・算定表(令和元年版)】」が発表され,裁判所ウェブサイトにも掲載されました。

 今回は,この「新算定表」の発表による影響について,ざっくりと説明します。
 

2.「基本的な枠組み」は変わりません

 父母(夫婦)の収入の割合に応じて負担する,「按分」という考え方や,年収(総支給額)から公租公課や職業費などを控除して基礎収入を算定する,などと言った方式は変わっていません。

 したがって,「新算定表」においても,お子様の人数や年齢に応じた表をみれば,調停など裁判手続きになった場合に決められる養育費(婚姻費用)の額について,「おおよそ」の見込みが立ちます。
 

3.「統計資料」「制度」が更新されました

 他方,算定の基礎となる統計資料(職業費,特別経費,学習費などに関する資料)や所得税率や健康保険料率などの制度については,最新のものに更新されました。
 

4.2~3の結果,どうなる?

 その結果,養育費(婚姻費用)の負担割合を決める基礎収入(総収入に占める基礎収入の割合)が,

    ①給与所得者の場合 38~54%(旧算定表では,34~42%)

    ②自営業者の場合  48~61%(旧算定表では,47~52%)

給与所得者の場合
38~54%(旧算定表では,34~42%)

自営業者の場合
48~61%(旧算定表では,47~52%)

となりました。
 

5.その一方で・・・

 他方,生活費指数(大人を100とした場合の,子の生活費の割合)は,

    ①0~14歳 62(旧算定表は,55

    ②15歳以上 85(旧算定表は,「15~19歳」として,90

0~14歳 62(旧算定表は,55)

15歳以上 85(旧算定表は,「15~19歳」として,90)

 とされました。これは,平成15年当時と比べ,0~14歳については,教育費を考慮する前の生活費の割合が増えた一方,15歳以上については,国公立高等学校の学費が下がったことによります。
 

6.結論:養育費の額は・・・?

  適用される表で確認いただく必要がありますが,旧算定表と比べ,1~2万円程度増える場合もあれば,変動がない場合もあるようです。

 なお,塾の費用や大学進学に関する費用の負担については,別途,考慮・計算する必要がありますので,個別にご相談いただけると幸いです。
 

7.追記~注意点~

(1)「新算定表」の発表は,養育費(婚姻費用)の額を変更すべき事情変更には該当しない,と言われています。

 例えば,「旧算定表」時代に定めた養育費の額について,「新算定表」で計算したら1~2万円増えるとしても,「新算定表」が発表されたという事情「だけ」では,直ちに増額が認められるわけではない,ということです。

 したがって,既に決められた養育費を増額してもらいたいと考える場合,養育費を定めたときと比べ,「新算定表」が発表されたから,ではなく,収入の増減があった,お子様が進学した,などの理由が必要となります。

(2)養育費の支払義務の終期は,「未成熟子を脱する時期」とされています。

 「新算定表」が「0~14歳」と「15~19歳」ではなく,「0~14歳」と「15歳以上」とされたのは,このような理由からです。

 したがって,お子様が20歳に達すれば必ず養育費の支払義務がなくなる,という訳ではなく,大学に進学したなどの事情がある場合,個別に判断されます。

弁護士 小山 明輝

養育費以外にも離婚前に決めることがたくさんあります。

養育費以外にも離婚前に
決めることがたくさんあります。

その解雇,大丈夫ですか?~就業規則と懲戒処分(解雇)の基本的なおはなし~

1.就業規則,ありますか?

「職務怠慢(遅刻,無断欠勤,etc.)など問題のある従業員に対し,懲戒処分を下したい。」

会社(法人)か否かにかかわらず、雇用者の方々は残念ながらこのような事態に遭遇することも珍しくありません。

しかし、実は就業規則に懲戒の「事由」と「手段」を明記していないとそもそも懲戒処分を下せないということはご存じでしょうか。

時々、会社あるいは個人事業主の方から「就業規則がない」ということを耳にすることがありますが会社(事業所)の規律・秩序を守るという観点から就業規則は必須と言えます。

2.「明日から来なくて良い。」は通用しない:(懲戒)解雇は慎重に。

(1)解雇が問題となる事件は多い

 「従業員を懲戒解雇にしたら弁護士から『解雇無効(不当解雇)』を主張する
  内容証明郵便が届きました!」

 このような相談を受けることは,決して少なくありません。地方裁判所で申し
 立てられた労働審判のうち4割以上が解雇など(従業員としての)地位確認に
 関するものという統計もあります(弁護士白書2016年版)。

(2)懲戒解雇の高いハードル

 形式的には懲戒事由にあたるからと言って、直ちに懲戒処分が有効とは限りま
 せん。特に「懲戒解雇」は懲戒処分の中でも一番重いものであり、よほどの事情が
 なければ裁判で争われた場合「解雇権の濫用」として無効と判断されかねません。

(3)「普通解雇」にも要件がある

 一方、「懲戒解雇」の有効性を争われることを避けるため、30日分以上の平均
 賃金(いわゆる解雇予告手当)を払って、即日「普通解雇」すれば大丈夫かと
 言えばそうではありません。

 解雇をする場合には、労働契約法(第16条)において「客観的に合理的な」理由
 と「社会通念上」の相当性が求められおり、両者のいずれかが認められなければ
 やはり「解雇権の濫用」として無効となります。

 解雇が無効となる場合、雇用主が「問題がある」と考えた従業員の職場復帰、
 あるいは退職するとしても一定の損害賠償金や慰謝料などの支払いを求められる
 ことになります。

3.afterよりもbefore

  このように、従業員の解雇は事後的にトラブル・紛争になるリスクを抱えています。
 リスクの予防ないし回避、あるいは「最小化」という観点から事前の相談を強く
 お勧めします。

(弁護士 小山 明輝)

1.就業規則,ありますか?

「職務怠慢(遅刻,無断欠勤,etc.)など問題のある従業員に対し,懲戒処分を下したい。」

会社(法人)か否かにかかわらず、雇用者の方々は残念ながらこのような事態に遭遇することも珍しくありません。

しかし、実は就業規則に懲戒の「事由」と「手段」を明記していないとそもそも懲戒処分を下せないということはご存じでしょうか。

時々、会社あるいは個人事業主の方から「就業規則がない」ということを耳にすることがありますが会社(事業所)の規律・秩序を守るという観点から就業規則は必須と言えます。

2.「明日から来なくて良い。」は通用しない:(懲戒)解雇は慎重に。

(1)解雇が問題となる事件は多い

 「従業員を懲戒解雇にしたら弁護士から『解雇無効(不当解雇)』を主張する内容証明郵便が届きました!」

 このような相談を受けることは,決して少なくありません。地方裁判所で申し立てられた労働審判のうち4割以上が解雇など(従業員としての)地位確認に関するものという統計もあります(弁護士白書2016年版)。

(2)懲戒解雇の高いハードル

 形式的には懲戒事由にあたるからと言って、直ちに懲戒処分が有効とは限りません。特に「懲戒解雇」は懲戒処分の中でも一番重いものであり、よほどの事情がなければ裁判で争われた場合「解雇権の濫用」として無効と判断されかねません。

(3)「普通解雇」にも要件がある

 一方、「懲戒解雇」の有効性を争われることを避けるため、30日分以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を払って、即日「普通解雇」すれば大丈夫かと言えばそうではありません。

 解雇をする場合には、労働契約法(第16条)において「客観的に合理的な」理由と「社会通念上」の相当性が求められおり、両者のいずれかが認められなければやはり「解雇権の濫用」として無効となります。

 解雇が無効となる場合、雇用主が「問題がある」と考えた従業員の職場復帰、あるいは退職するとしても一定の損害賠償金や慰謝料などの支払いを求められることになります。

3.afterよりもbefore

  このように、従業員の解雇は事後的にトラブル・紛争になるリスクを抱えています。リスクの予防ないし回避、あるいは「最小化」という観点から事前の相談を強くお勧めします。

(弁護士 小山 明輝)

~変わる強制執行?:民事執行法改正のおはなし~

1.知っていますか?民事執行法の改正

最近,改正相続法や事業承継税制に関するお話を耳にすることが増えている印象ですが,実は「民事執行法」(預貯金の差押えや不動産競売など「強制執行」に関する法律)の改正も行われていたこと,ご存じでしょうか。

ちなみに成立は令和元年5月10日,施行は「交付日(5月17日)から1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

つまり,遅くても来年5月17日までには運用が開始されるということです。

2.何が変わる?改正のポイント

(1)債務者以外の第三者からの情報取得手続き

   一定の要件の下,裁判所を通じ,以下の情報が取得できるようになります。

     ① 金融機関から:預貯金や上場株式・国債等に関する情報

     ② 登記所から :土地・建物に関する情報

     ③ 市町村・日本年金機構等から:給与債権(勤務先)に関する情報

① 金融機関から:
預貯金や上場株式・国債等に関する情報

② 登記所から :
土地・建物に関する情報

③ 市町村・日本年金機構等から:
給与債権(勤務先)に関する情報

 もっとも,③については,「養育費等の債権」や「生命・身体の侵害による損害賠償請求権」を有する場合に限られます。

(2)財産開示制度の見直し

① 財産開示の申立てが可能な債権者が拡大されます。例えば,強制執行が可能な書面(「執行力のある債務名義」と言います。)が,「公正証書(により金銭の支払いを取り決めた場合)」や「仮執行宣言付き支払督促」の場合も利用が可能となります。

② 債務者への「ペナルティ」が強化されます。

(3)その他

 不動産競売における暴力団員の買受け防止方策の新設や,国内における子の引渡しに関する制度の整備,などがあります。

3.債権回収に関するご相談もお受けしています!

 事業者の方にとって,「債権回収」に関する悩み・問題はあって欲しくないものですが,なくならないものです。

 取引先が売掛金を払ってくれない,など「債権回収」でお困りのことがあれば,できるだけお早めに,「こたけひまわり法律事務所」へご相談ください。

(弁護士 小山 明輝)

債務整理についてはこちら

相続が変わります!~運用開始(施行)時期と「遺留分」のおはなし~

1.新しい相続法

 いわゆる「相続法」が改正され,段階的な施行(平たく言うと「運用開始」でしょうか。)がはじまっています。

 施行時期は,大まかに分けると次のとおりです。

  • 自筆証書遺言の方式の緩和
    2019年1月13日。つまり,すでに施行されています!
     
  • 配偶者の居住の権利(配偶者居住権)に関する規定
    2020年4月1日。とても重要な新設制度なので,要チェックです!
     
  • 法務局における遺言書の保管等に関する法律
    2020年7月10日。こちらも来年です。
     
  • それ以外
    2019年7月1日。つまり,もうすぐです!
     

2.「遺留分」制度が変わります

 「いりゅうぶん」と読みます。多少の誤解をおそれずに平たく説明すると,「法律上,相続人に最低限保証されている相続分」でしょうか。

 この遺留分制度が,次のとおり変更されました。

(1)被相続人による生前贈与や遺贈で遺留分を侵害された方は,「遺留分減殺請求」という方法で,相続財産から自分の遺留分に応じた「財産」の引き渡しを求めることができ「ました」。

「財産」と書いたのは,これまでは必ずしも金銭的な請求に限られなかったからです(例えば侵害された財産(利益)が不動産なら持分,株式なら株式。)。

 しかし,「2019年7月1日以降に発生した相続」については,「金銭」の支払請求に限られます。

 また,請求された側については,負担する額の全部または一部の支払いについて,期限の許与(猶予)を求めることができる制度も設けられました。

 これら制度により,例えば事業承継のために必要な株式を相続する場面で,悩みが緩和される,かもしれません。

(2)さらに,相続人に対する生前贈与についても遺留分減殺請求の対象となるのですが,これまでその「さかのぼり期間」の制限がありませんでした。例えば,20年以上前におこなった相続人に対する贈与も遺留分減殺請求の対象となり得ました。

 しかし,今後の改正により,その「さかのぼり期間」が相続開始前10年間に限定されることとなりました。

 そこで,今後は,事業承継のための早めの対策が,相続に関する身内の争いを回避する上で,より一層重要となりそうです。

相続に関してお悩みの方はこちら

(弁護士 小山 明輝)

e(イー)ネ! ~民事裁判IT化への検討が始まっています!~

1.(民事)裁判にもIT化の波が。

 訴状や大量の証拠(書証)を,裁判所及び被告の人数分だけ紙面で用意し,収入印紙を貼って,郵便代(予納郵券)とともに送る,裁判が始まると期日ごとに裁判所に出廷する,etc.…。

 IT,IoTなどの言葉があふれかえる現代において,日本の裁判は未だにアナログ的です。

 しかし,ここに来てようやく,裁判(と言っても民事裁判に限ってですが)手続きにもIT化の波がやってきました。

  一昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」の中で,「裁判に係る手続き等のIT化を推進する方策について速やかに検討し,本年度中に結論を得る。」とされたことを受け,昨年の3月,「裁判手続き等のIT化に向けた取りまとめ」が発表されました(裁判手続き等のIT化検討会)。

  なお,最高裁判所長官の「新年のことば」でも民事訴訟手続きのIT化について触れられていました(裁判所ホームページ)。

2.3つの「e」。

 「取りまとめ」では,IT化の方向性として,「3つe」が示されています。

(1)e提出(e-Filing)

   主張(訴状など)・証拠のオンライン提出や手数料の電子納付・電子決済などに関するものです。

   実現すれば,大量の書類を準備する手間が省けたり,郵便代等裁判費用の削減につながったりする,かもしれません。

(2)e事件管理(e-Case Management)

   主張・証拠などのオンラインアクセスや,裁判期日のオンラインでの調整などに関するものです。

   実際に裁判に携わらないと分かりづらいですが,これが実現すると,弁護士的にはとてもとても助かります…。

(3)e法廷(e-Court)

   ウェブ会議やテレビ会議の導入・拡大などに関するものです。

   これは,機材さえ整えば,法的にも技術的にも直ぐに実現できるような…。

3.e(イー)相談?

  さて,我が身を振り返ると,相談は相変わらず,「事務所での面談」が原則。

  クラウド上で契約書等の管理を行えるサービスを提供している業者さんもありますが,さらに「ウェブ相談」など,「弁護士業のIT化」も真剣に検討する時期に来ているようです。

  (弁護士 小山 明輝)