相続が変わります!~運用開始(施行)時期と「遺留分」のおはなし~
1.新しい相続法
いわゆる「相続法」が改正され,段階的な施行(平たく言うと「運用開始」でしょうか。)がはじまっています。
施行時期は,大まかに分けると次のとおりです。
- 自筆証書遺言の方式の緩和
2019年1月13日。つまり,すでに施行されています!
- 配偶者の居住の権利(配偶者居住権)に関する規定
2020年4月1日。とても重要な新設制度なので,要チェックです!
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律
2020年7月10日。こちらも来年です。
- それ以外
2019年7月1日。つまり,もうすぐです!
2.「遺留分」制度が変わります
「いりゅうぶん」と読みます。多少の誤解をおそれずに平たく説明すると,「法律上,相続人に最低限保証されている相続分」でしょうか。
この遺留分制度が,次のとおり変更されました。
(1)被相続人による生前贈与や遺贈で遺留分を侵害された方は,「遺留分減殺請求」という方法で,相続財産から自分の遺留分に応じた「財産」の引き渡しを求めることができ「ました」。
「財産」と書いたのは,これまでは必ずしも金銭的な請求に限られなかったからです(例えば侵害された財産(利益)が不動産なら持分,株式なら株式。)。
しかし,「2019年7月1日以降に発生した相続」については,「金銭」の支払請求に限られます。
また,請求された側については,負担する額の全部または一部の支払いについて,期限の許与(猶予)を求めることができる制度も設けられました。
これら制度により,例えば事業承継のために必要な株式を相続する場面で,悩みが緩和される,かもしれません。
(2)さらに,相続人に対する生前贈与についても遺留分減殺請求の対象となるのですが,これまでその「さかのぼり期間」の制限がありませんでした。例えば,20年以上前におこなった相続人に対する贈与も遺留分減殺請求の対象となり得ました。
しかし,今後の改正により,その「さかのぼり期間」が相続開始前10年間に限定されることとなりました。
そこで,今後は,事業承継のための早めの対策が,相続に関する身内の争いを回避する上で,より一層重要となりそうです。
(弁護士 小山 明輝)